AI Navigator ロゴAI Navigator
· コラムブログ重要度 (64)

介護のAI活用|記録業務の効率化と見守りで現場の負担を減らす方法

介護のAI活用を、深刻な人手不足に悩む中小の介護事業者の目線で解説します。音声入力による記録業務の効率化を軸に、夜間の見守り、ケアプラン作成、注意点と補助金の使い方まで、現場の負担を減らす現実的な始め方を具体的にまとめました。

介護のAI活用|記録業務の効率化と見守りで現場の負担を減らす方法

「介護のAI活用と検索しても、出てくるのは大手法人の最新ロボットや華やかな実証事業の話ばかりで、うちのような小さな施設が何から始めればいいのか分からない」。特別養護老人ホームやデイサービス、グループホームなどを運営する事業者から、よく聞くお悩みです。結論から申し上げると、人手不足に苦しむ中小の介護事業者がまず取り組むべきは、職員の負担が最も重い「記録業務」を音声入力やAIで効率化し、生まれた時間と人手を利用者へのケアに振り向けることです。この記事では、介護でAI活用が急がれる背景を数字で押さえたうえで、記録業務の効率化、夜間の見守り、ケアプラン作成への広がり、そして個人情報や現場定着などの注意点までを具体的に解説します。読み終えるころには「自社の施設ならどこから始めるか」の見当がつくはずです。

介護でAI活用が急がれる背景|人手不足と記録業務の重さ

人手が足りない中で高齢者のケアにあたる介護職員

なぜ今、介護現場でAIの活用がこれほど語られるのでしょうか。最大の理由は、担い手不足の深刻さにあります。厚生労働省の推計では、介護職員は必要数に対して2026年度に約25万人、2040年度には約57万人が不足すると見込まれています(厚生労働省)。採用環境も厳しく、介護職の有効求人倍率は全職種平均のおよそ3倍を超える高水準が続いており、人を増やして業務量に対応するという従来のやり方が通用しにくくなっています。

しかも介護職員の仕事は、利用者に直接向き合う「ケア」だけではありません。**日々の介護記録、申し送り、ヒヤリハット報告、各種書類の作成といった「間接業務」**が想像以上に重くのしかかっています。手書きやExcelでの記録は転記や清書に時間がかかり、残業や持ち帰り仕事の温床になりがちです。ケアの質を落とさずにこの間接業務をどう軽くするかが、多くの施設に共通する切実な課題です。

こうした状況を背景に、AIやICTの活用が現実的な選択肢として注目されています。ポイントは、AIに人の代わりをさせるのではなく、職員を事務作業から解放し、人にしかできないケアに集中してもらうという発想です。

介護記録の効率化|音声入力とAIで記録時間を減らす

タブレットやスマートフォンで介護記録を入力する職員

まず着手すべきは、介護記録の効率化です。ここが職員の負担が最も大きく、AIの効果を実感しやすい領域だからです。

近年広がっているのが、音声入力とAIを組み合わせた記録作成です。ケアの様子をその場でスマートフォンやインカムに話しかけるだけで、AIが音声を文字に起こし、生成AIが規定のフォーマットに沿った介護記録へと自動で整えてくれます。記憶が新しいうちに記録を残せるため、勤務終了後にまとめて書く必要がなくなります。ある事業者の事例では、この仕組みの導入によって記録業務が約85%削減されたと報告されています(renue)。

記録の効率化は、加算の面でも見逃せません。厚生労働省が運営する**科学的介護情報システム「LIFE」**は、全国の事業所からケア内容のデータを集めて分析結果を返す仕組みで、科学的介護推進体制加算などの算定にはこのLIFEへのデータ提出が必要です(コニカミノルタ)。手書きやExcelのままでは提出が大きな負担になりますが、記録を最初からデジタルで残せば、LIFEへの連携までスムーズになり、加算の取得と業務効率化を同時に実現できます。

見守りAI・センサーで夜間巡視の負担を軽くする

夜間に見守りが行われる高齢者施設の居室

記録と並んで負担が重いのが、夜勤帯の見守りです。少人数で多くの入居者を担当する夜間は、定期的な巡視や急変への対応が職員の心身に大きくのしかかります。

そこで効果を発揮するのが、見守りAI・センサーです。ベッドに設置したセンサーやカメラが、利用者の睡眠や呼吸、起き上がりや離床の兆候を検知し、異常があればスタッフのスマートフォンへ通知します。これにより、「異常がないかを確認するためだけの巡視」を減らし、本当に対応が必要な人へ職員を集中させられます。結果として、夜間の事故や転倒のリスクを抑えながら、職員の身体的・精神的な負担を軽くできます。

見守りセンサーは、比較的導入のハードルが低く、効果が見えやすいのも特徴です。特別養護老人ホームやグループホームなど、夜間巡視の負担が大きい入所系の施設ほど導入の優先度は高く、「まず一室から試し、効果を確かめてから広げる」という進め方とも相性が良い、最初の一歩として選びやすい領域です。

ケアプラン作成・バックオフィスへの広がり

書類とパソコンでケアプランや事務作業を進めるケアマネジャー

記録と見守りで足場を固めたら、AIの活用はさらに広い業務へと広げられます。

一つは、ケアプランや各種書類の作成支援です。生成AIを使えば、利用者の状態や記録をもとにケアプランのたたき台を素早く用意できます。日本経済新聞は、AIによってケアプラン作成の一部を代替し、書類整理を9割減らした取り組みを報じています(日本経済新聞)。もちろん最終的な内容の判断と責任はケアマネジャーが負いますが、ゼロから書く作業をAIの下書きの手直しに変えるだけで、負担は大きく変わります。

もう一つは、バックオフィス業務です。介護施設の運営には、シフト作成、請求業務、家族への報告、問い合わせ対応など事務作業が数多くあります。複雑になりがちなシフト作成をAIが補助したり、日々の記録から家族向けの報告文の下書きを生成したりと、直接ケア以外の場面でも時間を生み出せます。ただし、いきなり全部をやろうとせず、記録という一番効く領域から始めて順に広げることが、無理なく定着させるコツです。

介護現場でAIを使う際の注意点|個人情報・ケアの質・進め方

AI活用の進め方を話し合う介護施設のスタッフ

介護でAIを活用するうえでは、一般企業以上に配慮すべき論点があります。ここを外すと、効率化どころか信頼を損ないかねません。

1つ目は、個人情報の保護です。 介護記録には、利用者の健康状態や家族関係など、極めてセンシティブな情報が含まれます。入力した内容が学習に使われる可能性のある無料の生成AIに、利用者を特定できる情報を安易に入力するのは避けるべきです。入力内容を学習に使わない設計のサービスや法人向けプランを選び、施設としての利用ルールを明文化しておくことが欠かせません。

2つ目は、ケアの質と「人にしかできないこと」を守ることです。 AIは記録や見守りを助ける道具であり、利用者の表情や声色から気持ちを汲み取り、寄り添うことはできません。AIに任せるのはあくまで間接業務であり、対人ケアの中心は人が担うという線引きを崩さないこと、そして生成AIの出力には誤りが混じるため記録やケアプランの内容を必ず職員が確認することが、介護の価値を守る前提になります。

3つ目は、小さく始めて現場に定着させることです。 現場のスタッフが使いこなせなければ、どんなツールも宝の持ち腐れになります。まずは記録や見守りといった一つの業務に絞り、操作がシンプルなものを選ぶことが成功の鍵です。あわせて、介護分野には**「介護テクノロジー導入支援事業」などの補助金**があり、要件を満たせば導入費用の一部(制度によっては高い補助率)が支援される場合があります(LINE WORKS)。制度の内容や補助率は年度ごとに変わるため、活用を検討する際は最新の公募要領を都道府県などの公式情報で必ず確認してください。

まとめ

介護のAI活用は、大手法人の最新ロボットや華やかな実証事業だけの話ではありません。介護職員が2026年度に約25万人、2040年度には約57万人不足すると見込まれる(厚生労働省)今こそ、中小の介護事業者が着手すべき現実的な一歩は、職員の負担が最も重い記録業務を音声入力やAIで効率化し、生まれた時間と人手を利用者へのケアに振り向けることです。記録のデジタル化を土台に見守りやケアプラン作成へと順に広げつつ、個人情報の保護と「人にしかできないケア」の線引きを守る。記録という一点に絞って小さく試し、補助金も活用しながら定着させてから広げることが、限られた人員でケアの質を守り抜くための王道です。

自社の施設でどの業務からAIを始めるべきかという判断は、外からの視点が加わると一気に前へ進みます。株式会社オモイカネでは、介護をはじめとする人手不足に悩む現場のAI活用を、業務の棚卸しから現場への定着まで伴走してご支援しています。詳しくはサービス紹介をご覧いただき、ご相談やお見積もりはお問い合わせからお気軽にお寄せください。

参考ソース