AI用語は経営者が押さえる10語で足りる|会議と提案書で困らない最低限
AI用語がわからず会議や提案書で置いていかれる経営者向けに、最低限おさえる10語を厳選して解説します。生成AI・LLM・ハルシネーション・RAG・AIエージェントなどを自社の言葉で説明できる形にし、提案書を鵜呑みにしないための問いまで整理しました。
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「AI担当や業者と話すと、知らない言葉ばかりで会話についていけない」。中小企業の経営者から、いま非常によく聞く悩みです。結論から言えば、経営者が覚えるべきAI用語は10語で足ります。用語辞典を丸暗記する必要はありません。会議や業者の提案書で実際に出てくる言葉を、自社の言葉で人に説明できるくらいに理解しておけば、判断は十分にできます。この記事では、その10語を「基礎5語」と「実践5語」に分けて、専門知識ゼロの経営者向けにやさしく解説します。あわせて、似た言葉の見分け方と、提案書を鵜呑みにしないための3つの問いまで示します。
経営者に必要なのは「用語辞典」ではなく10語だけ

まず押さえておきたいのは、経営者と現場担当者では、必要な用語の深さが違うということです。担当者は操作に必要な細かい言葉まで知る必要がありますが、経営者に必要なのは「判断に使う言葉」だけです。業者が何を提案しているのか、どこにリスクがあるのか、費用に見合うのかを見極められれば十分です。
用語を知らないまま放置すると、経営判断が止まります。総務省の令和7年版情報通信白書によると、生成AIの活用方針を定めている企業は大企業の約56%に対し、**中小企業は約34%**にとどまります。活用にあたっての懸念事項でも「効果的な活用方法がわからない」が30.1%で最多でした(総務省)。「わからない」の入り口には、多くの場合「言葉がわからない」があります。言葉が通じないと、業者の説明も評価できず、社内で方針も語れません。
裏を返せば、共通の言葉を持つだけで会話が前に進みます。国のAI事業者ガイドラインも、経営層のリーダーシップのもとでAIに向き合うことの重要性を示しています(経済産業省・総務省)。トップが言葉を持てば、会社全体のAI活用が動き出します。以下の10語は、そのための最小限の道具です。
会議で必ず出る基礎5語

まずは、AIの話題ならほぼ必ず登場する5語です。この5つを押さえれば、会議の会話にはついていけます。
1. 生成AI(せいせいエーアイ)。 文章・画像・音声などを新しく「作り出す」AIのことです。ChatGPTが代表例です。ここで大事なのは、AIという大きな枠の中に生成AIがある、という関係です。従来のAIが「分類・予測」を得意としたのに対し、生成AIは「作文・要約・下書き」を得意とします。経営者が今いちばん関係するのは、この生成AIです。
2. LLM(エルエルエム/大規模言語モデル)。 生成AIのうち、言葉を扱う頭脳部分の呼び名です。大量の文章を学習し、次に来る言葉を確率で予測することで、自然な文章を作ります。「ChatGPTの中身がLLM」とイメージすれば十分です。提案書に「最新のLLMを使用」とあれば、「言葉を扱うAIの中身」の話だと読み替えられます。
3. プロンプト。 AIに出す指示文のことです。「この文章を200字で要約して」といった、人間からの依頼がプロンプトです。AIの出来はプロンプト次第で大きく変わります。「うまく使えない」の多くは、指示の出し方(プロンプト)に原因があります。
4. トークン。 AIが文章を処理するときの文字のかたまりの単位です。日本語ではおおよそ1文字が1トークン前後にあたります。多くのAIサービスは、このトークンの量で料金が決まります。「トークン=処理量であり、課金の単位」と覚えておけば、費用の話で困りません。
5. ハルシネーション。 AIがもっともらしい嘘(誤情報)を作ってしまう現象です。日本語では「幻覚」と訳されます。AIは事実を確認しているのではなく、それらしい言葉を並べているため、平然と間違えます。この言葉を知っているだけで、**「AIの答えは人が確認する」**という最も大事な原則が腹に落ちます。
提案書・商談で出る実践5語

次は、業者との商談や提案書で出てくる、一歩踏み込んだ5語です。ここが分かると、提案の中身とお金の話が評価できるようになります。
6. RAG(ラグ/検索拡張生成)。 自社の資料を参照して答えさせる仕組みです。ふつうの生成AIは自社の内部情報を知りませんが、RAGを使うと、社内マニュアルや過去の議事録などを検索したうえで回答します。「自社の知識で答えるAIを作りたい」なら、まず候補になるのがこのRAGです。
7. ファインチューニング。 AIそのものに追加学習をさせて専用化する手法です。RAGが「その都度、資料を見せる」のに対し、ファインチューニングは「AIに覚え込ませる」イメージです。費用も手間も大きくなりがちで、多くの中小企業はRAGで足りることがほとんどです。提案書でファインチューニングを勧められたら、「RAGでは駄目なのか」と一度問い返す価値があります。
8. AIエージェント。 指示を待つだけでなく、目的に向けて複数の作業を自分で進めるAIです。チャットが「聞かれたら答える」秘書だとすれば、エージェントは「段取りして実行する」秘書です。便利な反面、勝手に動く範囲が広がるため、重要な操作の前に人の承認を挟む設計が欠かせません。国のガイドラインでも、この「人が判断を挟む仕組み」の重要性が示されています(経済産業省・総務省)。
9. API(エーピーアイ)。 ソフトウェア同士をつなぐ接続口のことです。「自社の販売管理システムとAIをAPIで連携する」といえば、両者を配管でつなぐ話だと考えれば十分です。連携には開発費がかかるため、「APIで連携」と提案されたら、費用と期間をあわせて確認します。
10. マルチモーダル。 文章だけでなく、画像・音声・PDFなど複数の種類の情報を扱えることを指します。「写真を見せて質問する」「音声を文字に起こす」といった使い方ができます。現場の帳票や写真を扱いたい会社にとっては、この対応可否が実用性を左右します。
混同しやすい言葉の見分け方

用語辞典を読んでも会話でつまずくのは、似た言葉の区別でつまずくからです。経営者が特に混同しやすい3組を、ひとことで整理します。
| 迷いやすい2語 | ひとことの違い |
|---|---|
| 生成AIと検索 | 検索は「探す」、生成AIは「作る」 |
| RAGとファインチューニング | 資料を「見せる」か、AIに「覚えさせる」か |
| チャットとAIエージェント | 「答える」か、段取りして「実行する」か |
たとえば「生成AIと検索は何が違うのか」と聞かれたら、「検索は既にあるページを探して見せる仕組み、生成AIはその場で文章を作る仕組み」と答えられれば十分です。正確な技術的定義より、この一言の違いのほうが会議では役に立ちます。
もう一つ大事なのが、「効率化」と「自動化」の違いです。効率化は人の作業を速くすること、自動化は人の手を離れて処理が回ることを指します。業者が「自動化できます」と言うとき、本当に人の手が要らなくなるのか、それとも下書きまでなのかで、価値も注意点も変わります。言葉の裏にある「人がどこまで関わるか」を見るのが、経営者の読み方です。
用語を「自社の言葉」に翻訳して使う3つの問い

最後に、覚えた10語を判断の武器に変える方法です。用語は覚えることが目的ではありません。提案を評価し、社内に伝えるために使います。提案書や商談で専門用語が出てきたら、次の3つを自分の言葉で問い返してください。
問い1:「それは、うちのどの業務が、どう変わるのですか」。 用語ではなく、自社の業務に翻訳させる問いです。「RAGを導入します」ではなく、「問い合わせ対応の一次回答が自動で下書きされます」と業務の言葉で説明できる業者は信頼できます。専門用語のままでしか説明できない提案は、要注意です。
問い2:「なぜ、その方法でないと駄目なのですか」。 たとえばファインチューニングやAPI連携のように費用のかさむ提案には、より簡単な代替がないかを確認します。「RAGや既製ツールでは足りない理由」を具体的に答えられるかで、提案の質が見えます。
問い3:「人はどこで確認し、誰が責任を持つのですか」。 ハルシネーションやAIエージェントの説明で欠かせない問いです。AIに任せる範囲と、人が確認する箇所をはっきりさせます。「全部自動でお任せ」を安易に信じないことが、事故を防ぎます。
この3つの問いは、どれも専門知識を必要としません。10語を土台に問い返すだけで、業者との会話は対等になります。わからない言葉が出たら、恥ずかしがらず「それは自社の言葉でいうと何ですか」と聞いてよいのです。聞ける経営者こそ、判断を誤りません。
まとめ
経営者に必要なAI用語は、会議で出る基礎5語(生成AI・LLM・プロンプト・トークン・ハルシネーション)と、提案書で出る実践5語(RAG・ファインチューニング・AIエージェント・API・マルチモーダル)の10語で足ります。用語辞典を暗記する必要はありません。大切なのは、似た言葉を一言で区別できること、そして用語を「自社の業務」に翻訳して問い返せることです。中小企業の多くが「効果的な活用方法がわからない」と感じていますが(総務省)、その入り口にある「言葉の壁」は、この10語で越えられます。
明日やること(今日の午後でも可):この記事の10語のうち3語を選び、それぞれ「うちの会社の言葉でいうと何か」を1行で書き出してみてください。たとえば「RAG=うちの見積もり資料を見て答えるAI」のように。自社の業務に結びつけて言い換えられた瞬間、その言葉はもう、判断に使える道具になっています。
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